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評価:
本多 孝好
双葉社
¥ 1,575
(2007-05)
Amazonランキング:
33946位
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まず一言目は、「本多さん、イメチェン成功おめでとう!」です。
いやはや、かなり失礼な発言ですが、今までの本多さんの雰囲気を、
がらりと変えた作品です。私的に表すと「東京版・鴨川ホルモー」
だからと言って、面白いか…というと非常に微妙なところなんですけど。
高校で流行っていたのは、僕を張り付けの刑にし、
殴ったり蹴ったりする、という遊びだった。
繰り返される暴力に耐え、僕は誰も進学しないような大学に行く事を決めた。
死ぬ気で勉強し入学した大学だったが、周りを行く人は全て敵に見えた。
この中にはいじめっこが二割、いじめられっこが二割…
頭の中で生粋のいじめられっこである、自分の身の置き様を考える。
そんな時、僕は「正義の味方研究部」という奇妙なサークルに出会った。
問題なのは、話の途中から目指す地点が変わること。
「何が正義なのか分からない」というは、永遠のテーマだと思うのだが、
結局「何が正義なのか分からない」という結びで終わっているため、
「何か得た」という感じが、かなり希薄である。
そのため、主人公がいじめられっこという下位層から抜け出す、
という目的と、「何が正義なのか分からない」という混沌とが
ぐちゃぐちゃになってしまい、本当に言いたかった事がこれでもかと曖昧だ。
と、言うのも、「本当に言いたかった事」ということ自体が、
言葉や規律や法律で定められないような事柄だから仕方ないのだが、
そうすると、最初の下位層から抜け出す、という目的がうやむやになり、
主人公は、「それでも僕はダサいなりに…」なんて言いだして、
堂々巡りをしているじゃないか、と言うのが感想だった。
最後に部長が主人公を蹴るシーンはとても不快だった。
現実はそうかもしれないが、あの描写はちょっと行き過ぎてる気がして白ける。
そして最大の理由が、主人公が中盤からもうすでに正義を疑っている。
間先輩が10万くれた時点で、明らかに怪しいと気づくはずだ。
というか、読み手は絶対気づく描写になっているのに、
主人公がまったく気づいていない、みたいな風に進んでいくので、
個人的に読んでいてイライラした。ばれない伏線ならいいが、バレバレなのだ。
売りさばく物も、「大学といったら大麻かな」と予想がつくのに、
「え?!大麻ですか」みたいに驚く様子がかなり白々しい。
なんだか知っている事を、手取り足取り説明されている気になるのだ。
まぁ、これも個人的なところかもしれませんが…。
全体的には、今までの本多さんとは思えないくらい、
文章がかなりポップになっていて、リズミカルに読める。
その点では、イメージチェンジ大成功、正反対の執筆スタイルで斬新だった。
若干、森見さんや、万城目さんの売れ筋傾向に便乗したのだろうか、
とも思ったが、それを差し引いても、良い雰囲気ではあった。
って、私いつにも増して上から目線ですが…本多さん好きなので、
そこだけは間違えないよう、お伝えしておくとします。次回に期待。
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